チョコレートの原料であるカカオ豆がどのように育てられ、どんな過程を経てチョコレートになるかご存知でしょうか。今回はハワイ島のカカオ農園を訪れ、現地で改めて学んできた貴重な情報をお伝えしたいと思います。

カカオの木から直接実る不思議な果実



カカオ農園で多くの方が驚かれるのは、カカオの実のなり方です。普通の果物のように枝先に実がなるのではなく、なんと木の幹から直接実が出てくるんです。花が咲いた後、そのまま幹から実が育っていく様子は、初めて見る方にとってはかなり衝撃的な光景ではないでしょうか。

今回のツアーでも、他の参加者の方々が「えっ、こんな風になってるの?」と驚いていらっしゃいました。何度見ても、この独特な実のなり方には自然の不思議さを感じますね。


この農園では主にフォラステロ種とクリオロ種という2つの品種を栽培しています。フォラステロ種は私たちが普段食べ慣れているチョコレートの味に近く、世界で最も多く栽培されている品種です。一方、クリオロ種はナッツのような香ばしい風味が特徴的で、希少価値の高い品種として知られています。実際に食べ比べをさせていただきましたが、確かにクリオロ種には独特の香ばしさがあり、これが高級チョコレートに使われる理由がよく分かります。

150日かけて育つカカオと収穫のサイクル


カカオ豆は種をまいてから収穫まで約150日かかります。この農園では2週間に1回のペースで収穫を行っているそうです。つまり、常に成長段階の異なるカカオが育っているということですね。

💡 ポイント

カカオの収穫時期の見極めは非常に重要で、早すぎても遅すぎても品質に影響します。農園では熟練のスタッフが一つ一つ丁寧に熟度を確認しながら収穫していきます。


チョコレートは発酵食品だった!



ここで多くの方が驚かれるのではないでしょうか。実はチョコレートは発酵食品なんです。収穫されたカカオ豆は、まず発酵のプロセスを経ることになります。
この農園では天然のクエン酸を使って発酵させています。発酵によってカカオ豆のフレーバーが「ポンと上がる」という表現をされていましたが、まさにその通りで、発酵前と発酵後では味わいが全く違うものになるんです。発酵は単に保存のためだけではなく、チョコレートの美味しさを引き出すための重要な工程なんですね。

発酵食品というと味噌や醤油、チーズなどを思い浮かべる方が多いと思いますが、チョコレートも同じように微生物の力を借りて作られているんです。この事実を知ると、チョコレートの見方が変わりますよね。


焙煎がもたらす安全性と風味の向上



発酵の後に行われるのが乾燥と焙煎です。焙煎には大きく分けて2つの重要な役割があります。
まず一つ目は殺菌効果です。発酵過程で活動していた微生物の中には、そのまま摂取すると人体に害を及ぼす可能性があるものも含まれています。焙煎によってこれらの有害なバクテリアを殺菌し、安全に食べられる状態にするんです。

💡 ポイント

焙煎温度と時間の管理は非常にデリケートで、温度が低すぎると殺菌が不十分になり、高すぎると豆が焦げて風味が損なわれてしまいます。プロの焙煎師は豆の状態を見極めながら、最適な条件を見つけていきます。


二つ目の役割は、フレーバーの向上です。焙煎によってカカオ豆に含まれる成分が化学変化を起こし、私たちが「チョコレートの香り」として認識している複雑で豊かな香りが生まれます。コーヒー豆の焙煎と同じように、焙煎度合いによって味わいが大きく変わってくるのも興味深いところです。

ローチョコレートについて


最近では「ローチョコレート」と呼ばれる、焙煎していない、または低温で処理したチョコレートも人気を集めています。栄養素を壊さないという考え方から支持されているローチョコレートですが、これはこれで独自の製法と考え方があります。
ただし、通常のチョコレートが発酵と焙煎という工程を経ることで、安全性と美味しさの両方を実現していることも事実です。どちらが良い悪いではなく、それぞれの特徴を理解した上で、自分の好みや価値観に合わせて選ぶことが大切ですね。

まとめ


ハワイのカカオ農園で改めて実感したのは、チョコレートが単なるお菓子ではなく、長い時間と手間をかけて作られる発酵食品だということでした。木の幹から直接実るという独特な生態、150日という長い栽培期間、発酵と焙煎という複雑な工程を経て、私たちの手元に届くチョコレート。その一粒一粒に込められた農家の方々の思いと技術を感じながら、これからはもっと大切に味わいたいと思います。
みなさんも機会があれば、ぜひカカオ農園を訪れてみてください。実際に見て、触れて、味わうことで、チョコレートへの見方がきっと変わるはずです。そして、次にチョコレートを食べる時には、この記事で紹介した発酵と焙煎のプロセスを思い出していただけたら嬉しいです。

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